気のゆくまま筆のゆくまま

日々感じたことを書きます。

独断と偏見で選ぶジャッキー映画ベスト5

 

・カンフー時代が来た

 今年はカンフー映画時代復活のときである。

正月には「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」が、初夏には「アフリカン・カンフー・ナチス」が全国公開されるなど、いまや日本中がカンフーに魅了されていると言っても過言ではない。ゆえに、今回はカンフー界のスーパースター、私のスーパーヒーローたるジャッキー・チェンの映画をベスト5形式で紹介し、どれだけ面白いか解説しよう(なぜなら前回腐したので…)。ちなみに私はゴールデン・ハーベスト政策の映画が好きなので、選ぶのも同社制作映画が中心となる。

燃えよデブゴン/TOKYO MISSION [Blu-ray]

アフリカン・カンフー・ナチス

 

 

 

・前回の記事。驚愕的な「シティーハンター」を紹介している。

h-keiba.hatenadiary.jp

 

・楽しいジャッキー映画5選

・5位「ドランクマスター 酔拳

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ジャッキーがロー・ウェイのプロダクションにいたころ作った作品。しかしシリアス志向のロー・ウェイ制作ではなく、出向先で撮った映画なのでコメディタッチに仕上がっている。

実は、ジャッキーはブルース・リーの後継者として売り出された。ロー・ウェイはブルースのパートナーだったから、ジャッキーにもシリアスなカンフー使いを演じるよう言った。

だが全く売れない。そこでジャッキーは自分の制作、つまり明るさコミカルさを売りとした映画を撮ろうとして、いくつかの実験後それを昇華させたのが「酔拳」だ。

ここでジャッキーはまったく新しいカンフー映画に挑戦した。NHKのドキュメンタリーで観たと記憶しているが、特に斬新だったのはそのコミカルさと、修行のシーンだった。

当時の主流カンフー映画は突然強い男が出て来るか、あるいは神秘的な修行をして開花する、というものだった。しかしこの映画は違う。有名なお尻の下に蝋燭を、膝・腕・肩・頭の上に茶碗を置くという体幹レーニングや、瓶の水を入れ替えながら足腰を鍛える鍛錬など、合理的な理由でジャッキーは強くなる。

またコミカルなシーンでは、上記の体幹レーニング自体が滑稽なものだし(如何にサボるか注目)、戦闘シーンでも相手が大切にしているご下賜品をふりまわし、きりきり舞いにするなどする。いわばおちゃらけながら闘う。ニューヒーロー誕生だった。

厳しいとはいえ現実で出来なくもない修行の結果強くなる、コミカルな主人公。この作品は大いに受け、ジャッキーの出世作となった。 

ちなみに、今作をはじめとするロー・ウェイの元にいたころのジャッキー映画は「アフリカン・カンフー・ナチス」に出てくる影蛇拳やアペテシ師匠ほかのオマージュもとである。

 

・4位「スパルタンX

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 ブルース・リーの盟友であり、更には監督・俳優でもあるサモ・ハン・キンポーや、当時甘いマスクで人気だったユン・ピョウと組んで作った映画。なおこの三人は、京劇と中国武芸を専門とする学校で一緒に育った仲。だからこのゴールデン・コンビは何回も映画で共演しているのだ。

今作は海外で長期ロケを行っている。舞台はスペイン・バルセロナ。とある秘密をもつ白人女性を軸に、それを助けたいジャッキーとユン・ピョウ、それに私立探偵のサモ・ハンおよび謎の依頼人が絡んで騒動が起こる…といった作品。

この作品の白眉はクライマックスの格闘シーン。それまでも走行中のバイクに跳び蹴りを食わしたり、カーチェイスで吹っ飛ぶなどのアクションシーンがあったが、最後の敵はなんとキックボクシングの世界チャンピオン!彼とジャッキーの死闘は必見!本当に拳のスピードが速く、脚の動きも軽快。テンポのいいカンフー対キックボクシングが本当にいい。

なお、このタイトルは前にヒットした「プロジェクトA」(あとで紹介します)をもじったもので、原題は「快餐車」という。いまでいうキッチンカーのことだ。

邦題は恐らくカタカナ数文字+アルファベット1文字のタイトルを付ければ、大ヒットした「プロジェクトA」くらいは客が入るだろうといった雑な考えで作られている。

一応ジャッキーとユン・ピョウが生計をたてるために使っているキッチンカーの名前がスパルタンX号となっているが、これ香港版だとなんて名前なんだろう。

 

・3位「ポリス・ストーリー 香港国際警察

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ジャッキー映画の仲で、もっとも人気の高いシリーズ。ジャッキー演じる熱血刑事が、社会の悪と闘う作品だが、ジャッキーが熱血過ぎて空回りするシーンもしばしば。この作品のテーマソングは、一度はどこかで聴いたことがあるだろう。

主人公チェン刑事はジャッキーにとって大当たりな役であり、彼を演じた作品は4作(スピンアウトでのカメオ出演を含めれば5作)あり、シリーズになっているので良ければどうぞ。

今作では、麻薬シンジゲートと一警察署の戦いを描いている。タイトルは香港国際警察だが、作中ではおそらく所轄の一般警察署が舞台だ(国際的になるのは3から)。

チェン刑事は熱血なので、ピストルを持った多勢のマフィア相手にも怯まないで突っ込んでいく。この作品の最もすぐれた見所は、序盤のバスに飛び乗るシーンと、終盤のデパートにおける格闘シーンである。

バスのシーンは傘でバスに取り付き、左右に振られながら飛び乗るという無茶なアクションがあり、デパートの格闘シーンでは電飾で飾られたポールに飛びついて3階分くらいの高さを滑り降りる。言葉での説明は単調なものになるが、ジャッキーが大けが大やけどを負ったという事実が、アクションの激しさを物語る。

未だに気になるが、映画のポスターに出て来るタキシードの白人マフィアとアメリカ車のパトカーは何なんだろう。本編には一切出て来ない。多分、邦題の「香港国際警察」と一緒で誇大広告なのだろうが、それにしても謎。

・2位「プロジェクトA

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恐らくジャッキー映画でいちばん有名な作品。テーマ曲も結構中国に関するバラエティ番組で聴く。時計台に追い詰められたジャッキーが、長針に縋ったあと飛び降りる(落ちる)シーンは、戦前のトーキー映画をオマージュしたものらしいが余りに有名。

あらすじとしては海賊撲滅をめざす水上警察(沿岸警備隊)が、陸上警察といがみ合いながらも共闘し、犯罪者を倒していくというもの。上掲の「香港国際警察」もそうだが、まずアクションシーンを考えてから、それにあったストーリーを書いていくという形式なので物語性は二の次。だが当時の香港でも最高クラスのアクション俳優が揃っているので、十二分に見応えのある作品となっている。

有名なアクションシーンは上述の時計台のシーンだが、他にも自転車を自由自在に乗り回しながら戦うシーンが最高だ。海賊に追われたジャッキーが住宅地を自転車で逃げながら戦うのだが、竹竿を使って相手を叩き落としたり、窓をノックて住人に開けさせ、それに敵を突っ込ませるなど、テンポのよく見やすい格闘に仕上がっている。

 助演のサモ・ハン・キンポーもユン・ピョウも当代一流のアクション俳優なので、この三人と海賊のボスによる戦いもまた秀逸。当時サモ・ハンが「動けるデブ」と言われたのも頷ける。繰り返すが全体的にアクションの出来とテンポが非常に良く、コメディタッチで見やすい秀作である。

ちなみに、先掲の「スパルタンX」と同じくジャッキー&サモ・ハン・キンポー&ユン・ピョウが主演した作品。こういった扱いを受けた映画はほかにも「サイクロンZ」があり、この三人で武道館ライブをするほどの人気だったそうな。

 

・選外だが面白い作品

1位に行く前に、私の選には漏れたが面白い作品をいくつか紹介しておく。こちらも面白いので気になったら見てみよう。

 

・「ヤングマスター 師弟出馬」

ジャッキーがゴールデン・ハーベストに移ってから初の作品。典型的なカンフー映画をコミカルなものに移植した画期的作品で、ジャッキー自ら歌った主題歌「さすらいのカンフー」はアジア中で大ヒットした。なお、師弟出馬とあるが、弟子は出ても師匠は出馬しない。

 

・「サンダーアーム 龍兄虎弟」

ジャッキー扮するトレジャーハンターが、秘宝を狙って戦うシリーズ第1弾。お気に入りらしくシリーズが3作品あり、最新作は2012年に撮られた。海外ロケが多く、道具を使った格闘シーンがユニークで面白い。今作では三菱自動車謹製の未来車(?)が活躍するが、撮影で何台か潰したという。三菱は泣いて良い。

 

・「ドラゴンロード」

スポーツ映画を撮ろうとしたがカンフー要素も盛り込んだ結果、結局中途半端になってしまったという作品。上述の「ヤングマスター」の続編として作り始めたようだが、途中で方向転換したせいかストーリーははっきり言って杜撰で、公開された地域によって作中のイベント順が入れ替わる。今見られるのは日本公開時冒頭だったラグビーみたいな何かがクライマックスになっているヴァージョン。だが、羽けりサッカーやラグビーもどきのアクションは超絶。

 

・1位「奇跡 ミラクル」

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ここで戻って1位の発表。これはジャッキーが一番気に入っているという作品で、香港が産んだ最大の歌姫であり、日本では西城秀樹の恋人として知られるアニタ・ムイがヒロイン役である。

設定は1930年の、爛熟した英領香港が舞台。職を求めて香港に来たジャッキー演じる風来坊が、薔薇売りの老女に助けられてから運が向き、マフィアのボスに上り詰める。老女は娘にとある嘘をついていたが、その嘘を取り繕うためにジャッキーが一肌脱ぐ、というお話。

当時、ジャッキーの作る映画はストーリー性が薄く、アクションだけだと言われていたので、それに発憤して作ったという作品だけあって、元になったものと同じく文学路線に仕上がっている。

セットも当時の香港の目抜き通りを再現するという豪華さで、ロケの為にエリザベス女王が泊まったという高級ホテルの最上階を借り切り、更に小道具も30年代のマフィアが使っていた銃や車(中には本当に人の命を奪ったものすらあった)を用意するという念の入りようだ。

かと言ってアクションの手を抜いている訳では無く、茶店での乱闘や水産加工会社での決戦は一見の価値あり。コメディエンヌとしてのアニタ・ムイも中々のもので、ミュージカルシーンが映画に花を添える。

ジャッキー映画としては異例の手法、脚本重視で作られた今作は受けなかったらしく、この作品以降の作品は元の手法に戻ってしまう。だが、充分に見応えがあり面白い作品なので、ジャッキー映画の入門には「奇跡 ミラクル」と「プロジェクトA」がいいよ、と胸を張って言える。

 

・おわりに

ここまで数作品を紹介してきたが、ジャッキー映画はアクション主体なので、筆者のことばで語り尽くせるものではない。是非皆さんにも気になる作品をチェックして貰って、この大カンフー時代に一緒に流されて欲しいものである。