プラモ作りにハマった話 - 気のゆくまま筆のゆくまま

私の周りには模型を趣味にしている人が多い。ある人はゾイドを、ある人はガンダムを、ある人は鉄道を、ある人は美少女を…といった塩梅式で、友人の四人に一人は日常的にプラモデル作りに精を出している。

私は高校の同期とよく電話をするし、大学同期の連中ともDiscordでほぼ毎日通話チャンネルを開いて遊んでいるが、会話中に大抵誰かがプラモを作っている。

それも皆で自分の作品を見せ合いっこなどして、とても楽しそうなのだ。

だからというわけではないが、積読も無くなってきたし、わたしもプラモを作ることにした。

ここで一つの問題があった。どういったプラモを作るか、という志望が、当時の私にはなかったのだ。

ゾイドやガンダムは論外だった。なぜなら私はそういうロボットアニメを見たことがない。原作を知らずに作るのはファンや製作者への冒涜だ、とまでは言わないが、気が引ける。自動車のプラモ…作っている腐れ縁はいるが、特に好きな車がある訳じゃないから却下。鉄道…魅力的に思えたが資金面とスペースの観点からだめ。

いろいろ考えた挙句、私は艦船模型に手を出すことにした。しかも軍艦である。祖父も海軍軍人だったし、大学のゼミでも戦史の調査をしたし…この軽い思いでした決断に、私は若干後悔することになる。

そんな私でも、流石に初心者がいきなり軍艦を作ったら失敗するくらいのことは分かった。だから、比較的簡単で作りやすいと勧められた、フジミ模型の艦NEXTシリーズに挑戦した。

艦船模型は基本的に着色や塗装が必須なのだそうだ。だが、このシリーズは塗装不要で、元のパーツに色が付いていて、足りないところはシールで補うという親切設計。

だからプラモからしばらく離れていた人でも作れます…この宣伝を真に受けた私は、さっそく空母「信濃」を購入、制作作業に入った。

だが、想像を超えた世界がそこには待っていた。

「信濃」は大和型戦艦の3番艦で、戦況悪化に鑑み戦艦から空母へ改装されたものの、物資不足や工廠職工の質的低下によって完工前に完成とされた。

もちろん戦力としては不十分で、乗組員の訓練や軍艦としての機能が不十分なまま、呉へと回航途中で撃沈された悲劇のフネだ。竣工してから10日間で沈んだ艦として知られる。

言うまでもなく、大和型は当時の世界で最大の戦艦である。だからそれを改装した信濃も、のちに米国が原子力空母に手を出すまでは、世界最大の空母として記憶されていた。だが、いくら元が世界最大と言っても、模型では1/700なのである。このサイズ縮小は、私の想定を軽く上回った。

まずはこの写真を見てほしい。長門の測距儀(と思われるもの)である。

ピントが合わず恐縮だが文字通り小指の先くらいの大きさで、具体的には2mmくらいしかない。このパーツははめ込み式で、艦体パーツの穴に入れていくのだが、1/700というスケールの問題か、穴が狭くて入らない時が多い。この穴に入らない問題は測距儀だけではなく、機銃や支柱などパーツ全般に及ぶ。

パーツ自体は指紋の線と比べられるレベルの大きさだが、これが所定の位置に入らないのだ。

これを入れるのはこの穴。

これもピンボケしているが、測距儀を入れるのは上の、小さい方の穴だ。

だが、これをはめたときは苦労した。穴が小さすぎて、どの角度にしても入らないのだ。そこでピンバイスや鑢を使って穴を広げるわけだが、かなり精密なものなので、下手に拡張すると穴が緩くなり、パーツが固定できなくなるという難点がある。

接着剤で固定しても良いが、私の腕ではどうしても接着剤が穴から溢れてしまい、見栄えが非常に悪くなる。よって常にギリギリのラインを見極め、穴を埋めるしかないのだ。

こうした細かい作業をしていると、いくらでも時間が潰せる。否、潰れる。気づいたら朝食が夕食になっているのもざらだ。けれど、非常に達成感はある。

数日間も、一日に何時間も使って完成させたプラモはやりがいの塊だし、見るだけでも楽しい。初めてやったという事もあって信濃は若干失敗した(ゆえに写真もあまり載せない)が、その他のフネは我ながら(初心者にしては)よくできた。

来月以降も、「金剛」「武蔵」「夕雲」「風雲」と作っていく予定である。展示ケースに入らないものもあるのが悩みだが、それでも作って楽しく、飾って面白い。

人に触発されて選んだ趣味だが、飽き性の私にしては案外長く続くかもしれない。

↓今まで作ったもの(上掲の信濃を除く)。