気のゆくまま筆のゆくまま

日々感じたことを書きます。

オッサンに腹巻きが必要な理由

 

・オッサンはつねに不調を抱えている

私が生まれてからまだ30年経っていない。

世間的には若者と言われる年齢だが、残念ながら肉体はそうはいかない。

元々心身共に弱体で、国から手当てが貰えるほどの障害もちである。

だからというわけではないが、私の肉体は非常にもろい。常に身体のどこかから苦情がでている。

聞くところによると、オッサンも同様であるという。彼らはつねに不調を抱えて生きているのだ。私だけではない!

オッサンの体が不平を言い始める理由はさまざまあるが、主な理由は老いである。人間の老いは案外早い。若いころ無理をすればするほど早く衰える。しかも、徐々に衰えるので気づいたら体が悪くなっているのだ。

私のような場合もなおさらだ。だから、我々不調の民は、何かしらのアイテムを使ってこれを緩和しなければいけない。以下、体がご機嫌になり、比較的文句を言わずに動いてくれるための神器を三種紹介する。

 

・腹巻き

世間一般のオッサンのイメージは、シャツと股引を身に着け、さらに腹巻きをしているというものであろう。これはドリフターズ加藤茶氏が演じてから、ある種不変の真理となっている。ではなぜオッサンはラクダの腹巻きをしているのか。

理由は単純である。腹が冷えると下るのだ。私も元々胃腸が弱く、潰瘍にすらなった程度の弱さである。また冷え性である。それに年齢が重なると、血行が悪くなり腹が冷えやすくなる。するとただでさえ軟便を起こしやすいお腹が、輪をかけて抗議活動を行い、それによって身体のほかの部分にも…というコンボが起きる。それを防いでくれるのが、何を隠そう腹巻きなのだ。

腹巻きは偉大である。イエスをあやす聖母のように、腹の機嫌をとってくれる。靴下も加えれば完璧だ。冷えやすい箇所を適切に温めることで、下るはずのお腹も何とか持ちこたえる。

私がいくら説得しても雷を起こす胃腸も、腹巻きの説得を受ければたいてい落ち着いてくれる。万が一実力行使に出たとしても、正露丸と腹巻きがあれば大体大丈夫な気がする。加齢による胃腸の痛みや軟便・下痢はあるというが、オッサンはそれを防ぐべく腹巻きをしているのだ。オッサンにとって腹巻きは言わば次元大介にとっての帽子であり、トレードマークと実利を兼ねた存在なのである。こうしてオッサンはいくらラフな格好をしていても、腹巻きを巻き続けるのだ。

 

・目薬

若いころ(といっても10年も経っていない)は、いくら論文を書くために史料を精読しようが、パソコンでゲームをしようが眼は元気だった。多少の眼精疲労があっても、寝れば治るだろ的な印象があった。だが、最近はそうはいかない。私は事務屋であり常にパソコンの画面と睨めっこをしているが、これが原因で眼に疲労と不満が蓄積し、ついに頭痛や吐き気で眠れすらしない、というレジスタンスを起こすようになったのだ。悲しいかなオッサンもこれは同様なようで、世の中にはやけにブルーベリーを使った食品やサプリがあふれ、眼に優しいルーペの広告もそこら中にある。

だが、何が一番効くかというと、群を抜いて効くのが目薬だ。眼科から処方されたものならなお良い。市販なら高ければ高いほど効果的だ。目もまた簡単に老化する器官であり、心が歳をとるより目の方が数年先を行っている。だから私の目と心が映画を見たいと叫んでいても、目の方は「お断りだ俺は寝たい、脳や胃腸と組んで抗議してやる」などと言いはじめるのだ。

はっきり言って私は他人より目が悪い。既に老眼鏡寸前の眼鏡をしているし、ハ○キルーペは数年来のお友達である。乱視で近視で眼底出血だから、毎日血走った眼で生きている。どうやらオッサンも一緒なようで、不機嫌そうに眼を細めているオッサンの大半はただ目が疲れているだけなのだ。そんな網膜や筋肉を鎮めてくれるのが、有効成分をふんだんに使った目薬である。人類の偉大な発明たる目薬は、決まった時間に決まった量をつけるだけで眼の不快感を大幅に低減する。

当然限度があり私の目は血走ったままなのだが、それでも目薬は不快感を取り払う効果がある。多少の頭痛や吐き気は残るが、つけるとつけないとでは天地の差がある。よって目薬もまたオッサンの必須アイテムで、いくらダンディーなオッサンでもこれを手放して快適な生活を送ろうなどとは言えないのだ。

 

・コルセット

オッサンは腰が悪い。私も腰が悪い。なぜなら大半のオッサンは良質ではない事務椅子に縛り付けられるか、身体を酷使するかのどちらかの理由で、それぞれ腰を虐めているのだ。私もその一人である。先述の通り私は事務屋だが、仕事柄外に出て草刈りをしたり家具を運んだりすることがある。いわばダブルパンチである。

更には小学生のころ相当太っていたため、「お前はキャッチャーで決まりだドカベンだ」と言われて少年野球でのポジションは捕手であった。プロ野球を見てもわかるようにベテランの元捕手は大抵一塁などに回されている。理由は腰をイワしていて、外野やほかの内野をやろうにもできないのだ。私の場合もまだ身体ができていないデブがキャッチャーをしたものだから、当然のように慢性的なギックリもちになった。

こうした寝ても腰が痛いというオッサンやキャッチャーの頼れる味方がコルセットである。コルセットは優しい。まるでミルキーのように優しい。草臥れ切って伸びず、常に丸くなってグチグチいっている足腰を、シャキッとまっすぐに近づけてくれる。湿布との仲も良好で、この最強のふたりはオッサンの腰痛肩こりを相当改善するパワーをもっている。腹巻きと併用すれば相乗効果でさらに腰痛と胃腸痛を和らげる、今はやりの言葉でいえばバブみを満たすママのような存在となる。スケベなオッサンがパブの女性に甘えるように、我々の腰もコルセットに依存しているのだ。

 

・オッサン万歳

ここまで肉体の疲労・老化と斗うためのアイテムを紹介してきた。他にも便利な道具はたくさんあるが、私個人的にはこの三つを外すことはできない。

死なない限り人間は老化し続ける。10代の少年ですら、身体のどこかは老化している。いくら心が若さを保っていても、体はそれを嘲笑うかの如く歳をとる。だからこそ頑張って時にはあやし、時には脅して体を動かさないと心まで老け込んでいくものだが、これらのアイテムにはそれをさせてくれるパワーがある。ジェットストリームアタックで的確に老化に攻撃してくれる。力不足でも奮闘はしてくれる。

いま老化していなくても、いつかどこかで身体は必ずどこかで謀反をおこす。いきなり本能寺を焼き始める。義理のステータスが最低値に近い。信長の野望三國志であれば簡単に斬ったり死地に送り込んで殺せるが、身体にたいしてそれは出来ない。だからこそ、私は常に腹巻きをし、コルセットを着け、目薬をどこかに忍ばせておくのだ。