・開化天皇陵について
開化天皇は第八代天皇。いわゆる欠史八代の最後で、この天皇に関する『日本書紀』の記述は少ない。手元の中公文庫版では註を含めて二ページしかない。
実在性はきわめて低い。だが非実在を証明するのはもっと難しいので、今後の研究と考古学的発掘に期待といったところだ。父は孝元天皇、子は実在する最古の天皇とも言われる崇神天皇である。
陵に比定されている古墳は100m規模の大規模な前方後円墳で、率川古墳群を構成する一つだ。学術的な名称は念仏寺山古墳。名前の由来は近隣の寺から取ったもので、かつてこの古墳を墓地として利用していたとか。他にも城として使われた古墳や水攻めの堤として使われた古墳もあるので、再利用の目的としては割と穏当な方だろう。
未だに被葬者は不明だが、天皇陵とみるよりは古代の奈良盆地で権力を振るっていた豪族の墓、と見る方が妥当ではあるまいか。
・陵の紹介
特記すべき事項として、この天皇陵は交通の便の良いところにある。JRおよび近鉄の奈良駅から徒歩1km、時間にして約15分といった場所だ。幹線道路・名前の由来となった寺・ホテルに囲まれていて、周囲の喧噪とは違った雰囲気である。
なお、墓地になった際、古墳の一部が削られたとか。当然ながらその痕跡を確認することはできない。
・おわりに
先述の通りこの古墳が天皇陵かどうかは疑問である。だが、開化天皇とされる実在の某かが葬られていることに変わりはない。奈良観光のついでに(と言っては失礼か)行くには、ちょうど良い神社である。前回紹介した漢國神社の近くでもあるし…