気のゆくまま筆のゆくまま

日々感じたことを書きます。

薬でキマった話

・薬でキマった。

前回の記事でも書いたが、私はいま不眠症が酷くて、鎮静剤に近い薬を飲んでいる。

 

h-keiba.hatenadiary.jp

 

ぶっちゃけて言えば精神を壊した人が飲む薬で、効いてくれば8時間は起きずに眠れるというものだ。

実際眠れなかった私としては重宝な薬品なのだが、一つだけ問題点があった。副作用である。

この薬は強い。だから医師からも「もしかしたら変に薬効が出るかも知れませんね、少数の人にしかこういった副反応は出ませんが」とは言われていた。よって多少の副作用が出てもおかしくはない。

だが、私の場合は幻覚・幻聴・意識喪失…とこの薬で出るほぼ全ての副作用を起こしたのだ。しかも、理性ではすでに寝ているはずなのに、身体と混濁した意識が勝手に動いていたのだ。これは、そんなキマった私の行動を記憶しておくための文章である。

・美少女に応援される

前に記事で書いたとおり、私はプラモ作りに最近凝っている。作っているのはフジミ模型の艦NEXTシリーズで、比較的難易度が低いモデルなのだが、それでも私にとってはむつかしいので一週間くらいかけて作っている。作業をするのは大抵夜だ。当たり前だ、昼間は仕事をしている。

ついこの前、私はプラモ作りを中断してノベルゲームの「月姫」を優先していた。あれは読むのに相当体力を使うので、プラモと並行すると疲労が甚だしくなる。だから「月姫」プレイ中はプラモ作りをセーブして、薬を飲んだらすぐ床に就いていた。

だが、ある夜、こんな夢を見た。今は大分廃れた(と思う)ブラウザゲームの「艦隊これくしょん」に登場する「金剛」に励まされながらプラモを作る夢だ。夢の中で作業は快調に進んでいた。

夢が終わり、こういう風に制作が進んだらいいな、と思って起き、机上の眼鏡を取ろうとすると、そこには作りかけの「金剛」が鎮座していた。

確かに「月姫」の到着予定日が不明だったから、「金剛」には多少手を付けて放置していた。だが、いつの間にか甲板の細かい階段やマンホール、機銃まで出来ているのだ。これらの作業は夢の中でやった記憶があった。

私の見たものは夢ではない、幻覚だったのだ。

多少の寒気を覚えたが、その日の夜私はまた同じように薬を飲み、寝た。ところが今度は夏目雅子と金剛に励まされながら、プラモを作る夢を見た。起きた。今度は艦橋ができあがっていた。現実世界で幻覚を見ていた。むろん、私の理性はプラモデルを作ろう!という気がない。深層心理上の、「月姫」もやりたいがプラモも作りたい、という意識が、理性を喪った身体を動かしていたのだ。

私は、明らかにトリップしていた。

 

・武将に小説を解説される

私は「三国志」が好きで、最近は宮城谷昌光氏のものを読んでいた。同氏の三国志は素晴らしい出来で、全12巻を一気呵成に読み終えた後、久し振りに深い満足感に浸ることができた。

だが、この読書体験には、余計な時間がかかっている。例によって薬でキマった私は、もうろうとした状態の中で読書を始めたのだ。

ちょうど曹操が漢中へ兵を進めた場面だった。五斗米道という道教系の教団を降した曹操が蜀を放置して帰還を図り、司馬懿がそれを諫めるという場面がある。読書中、私はそのシーンを、等身大の人物としてはっきりその目で見たのだ。途中で小説には書かれていない意図を、曹操自身や司馬懿などが自分の口で解説していた。

目が覚めた。目の前にはKindleを読みかけの携帯電話があり、すでに曹操劉備と漢中を巡って争う場面に移っていた。

無論、私は夜中に読書をする習慣はない。これも薬で飛んでいる状況の中、欲望のまま読み進めたにすぎない。慎重に再読したが、読み飛ばした頁も多々あった。

 

・恐ろしいせん妄状態

何度も強調している通り、上記の行動は私が意図したものではない。少なくとも理性に指嗾されたものではない。だが、薬によって増大した私の非理性は、身体を勝手に動かしていたのだ。

これらの行為をしている間、私にはなんとも言えない多幸感があった。当然である。したら楽しいだろうな、という行動をして、更にはこんなことがあったらいいな、というヴィジョンを見ていたのだから。恐ろしい事に、これらの他にも理性がないままDiscordに入る、などの奇行が繰り返されていたらしいが、私にはまったくその自覚が無かった。友人に指摘されて初めて気付いた程だ。

薬物乱用を助長する訳では無いが、薬をキメて飛ぶのは、自分が見たいもの、したいことを実現してしまうのでもの凄く幸福なことだ。何回も捕まる人の気持ちがよくわかる。

だが、だからこそしては駄目なのだ。こういった行動をした後、理性では「ああこれはまずい、タガが外れた状態では何するかわからんぞ」と思うものの、一方では「理想が悉く実現していくのだから、いいじゃないか」とも思ってしまうのだ。ただの錯誤であることは分かっている。だが、それでもあの幸福を掴むために、もう一度やりたい…それが薬によるトランス状態なのだ。

私はいま、それを避けるべく相当な減薬をしている。初日はそんな量を飲まなくても眠れた。二日目以降もそうあれかしと願っているし、そのためにも正しい生活リズムを維持するよう努力するつもりだ。重ねて言うが、劇薬を使うと相当な多幸感を得られる。だが、それを喪ったときの寂寥感は今まで感じた事のないものだった。故にもう一度再現しようとする。依存していく。

だからこそ、私は二度とトリップせずに済むよう、あらゆる手段を執っていくつもりなのである。